*脱活乾漆とは
 7世紀後半に中国から伝来し、奈良・天平時代に最盛期を迎えた漆を用いた彫刻技法。
 漆・粘土を盛り上げることで、表情豊かな面相、起伏にとんだ体躯、複雑な衣文や軽やかになびく天衣などの、自由自在な造形表現を可能にしました。
 平安時代以降、製作費・制作期間の問題から、木心乾漆や木彫に移行することで衰退し、鎌倉時代以降は大きな作品は作られなくなりました。

 (制作方法)
1.木製の芯木や竹かごの上に粘土(塑土)を盛り上げて像の概形(土台となる塑像)をつくります
2.塑像の上に麻布を麦漆(生漆に小麦粉を練りあわせたもの)で貼り重ねます
3.漆が乾固した後、麻布の目立たない部分(背面など)を切り出して、塑像を除去します
4.形を保持するための心木と棚板を組み入れて、切り出した麻布を麻紐で縫合します
5.合せ目に麻布を貼り付けます
6.木屎漆(麦漆に木屎を混入して練り上げたもの)を盛り上げて細部をつくります
7.細部まで整った後は、錆漆を塗り、さらに黒漆を塗って、最後に金箔を押したり、彩色したりして
  仕上げします
(参照:HP「埃まみれの書棚から〜古寺、古佛の本〜」 朝田 純一)

 
 
 当館で展示する脱活乾漆の作品は、作者である関頑亭が師・澤田政廣からいただいた1300年以上前(7世紀後半、白鳳時代)の破片をもとに、40年弱の時間をかけて独自に研究し、制作したものです。
 塑像の芯に硬質ウレタン、小麦粉の替わりにワラビ粉(ワラビの根から抽出したもの)を用いるなど、材料の面で一般的なものとの差異が見られます。また、木屎としてケヤキのノコ屑を炭化寸前まで水分を蒸発させ、黒漆には自身の手で集めた煤を使っています。
 このように独自の制作方法を確立し、父の遺志を受け継ぎ、平成4年10月に「丈六脱活乾漆弘法大師座像」を完成させることで、約800年ぶりに脱活乾漆の巨大仏を復活させています。
(参照:「弘法大師像◎関頑亭の世界」 中込 敦子



澤田政廣の世界 洗心美術館